UPDATE 2024/09/12
YOKAも来年で10周年。よくここまで走ってこれたものだと思います。
今までに大きな転機はいくつかあるのですが、精神的なところで一番大きかったのは、2019年、森・道・市場に出店した時のこと。下はその当時の写真です。
当時の商品はいろいろな木製品をメインとして、焚き火台と鉄板のみ。フェスで大きな家具が売れるはずもなく、ただただ反応だけを伺う時間が過ぎていったのですが、そんななか声をかけてくれたお客さんがいまして。そのお客さんが、
「あ!YOKAだ!」「僕の友達がYOKAで揃えたいって言ってた」
と言ってくれたんです。
その人自身のことではないし、なんてことない一言だったと思うのですが、僕は雷に打たれたような気分になりました。なぜならそれまでは、「揃えてもらう」というような気持ちで作ってはいなかったからなんです。
それまでは「作れるものファースト」な考え方でした。木材加工の工場さん、金属加工の工場さん、それぞれとの出会いがあり、そこにある素材を活かし、技術的にも実現可能なかっこいいものはなにか?という課題を自分に与えてデザインすることの繰り返し。これは、後から思えば非常に内向きな考え方だったなと。
「揃えたい」という気持ちは、これからに期待されているということ。まだ見ぬ製品に興味を持っていただいているということ。
これは、僕の考えを外に向かせてくれた一言でした。
では「揃えてもらう」というためにはどうしたら良いか。安易に考えられるのはブランドロゴを既存の製品にいれるような、いわゆるOEM(というか、ノベルティ制作に近いかたち)をするということ。でも、それまで作った木製家具や鉄製品などは、渾身の力を込めて1から形を考えたものです。それらの製品の隣に「人がデザインしたものにブランドロゴを入れたもの」を並べて、「商品増えました〜!」と言って良いのか??そもそも「揃えたい」という気持ちはそういうことで良かったのか!?
そんなわけで、僕の「渾身の力をこめて、新たなジャンルの製品を”オリジナルデザインで”作る」という新たな章が幕を開けたのでした。
そこから、ソロキャンプ用の木製品を作ったり、ヒット商品となった「YOKA TIPI」を生み出したり、不可能かと思っていたナイフをオリジナルで作ったり、様々なものを作ってきました。ぶっちゃけ、気の迷いでロゴ入れOEM製品を作ったこともあります(懺悔)。
いろいろを経て今では、「YOKAを買いだしたら、YOKAばっかりになってきた」「YOKAで揃えれば間違いない」という声を多くいただけるようになりました。本当に感謝です。
プロダクトを作るときに陥りがちなのは、「世の中にない」ものを作ろうとすること。それは立派なことではあるのですが、世の中になかったけど、使いにくければプロダクトとしての意味は無くなってしまいます。つまり「世の中にない」ことは入口に過ぎず、その中身が大事だと思うのです。
YOKAの開発YouTubeをご覧頂いている方にはおわかりかと思いますが、形を作り、実際に動く試作を作り、本当に嫌になるほど使い倒して失敗と改良を重ねて…その先にようやく商品化!という過程が、どの製品にもあります。YOKA製品の、世の中に無かったけれども、実際使ってみたら使いやすい。デザインやアイデアが奇抜なだけではない製品はそうして生まれるのです。
商品を購入して「失敗したな…」と思うのが一番嫌ですよね。なぜそういうことが起こるかというと、通常商品というのは長所だけを大声で訴え、短所はなるべく言わないようにするから。僕はそういうことはしたくありません。なので、商品開発の過程であらゆる失敗を先にしてしまい、改良しながらそこを埋めていきます。そしてその過程をすべて公開しています。そして失敗が埋めきらなかった商品は潔く、商品化を取りやめます(おそろしい…)。
そんなことをやっているので、YOKAの製品が商品化されるまでは非常に長いのですが…僕はその果てに、「間違いない」製品が生まれると信じています。
現在あるYOKAのプロダクトは、鍛え上げられ、磨き上げられた精鋭たち。そんな「間違いない」製品群だと思って今までのものを見ていただければ幸いですし、またこれからもそのスタイルは変えずに製品開発をしていきたいと思っています。
YOKAデザイナー 角田 崇