YOKAのコンセプトづくりをしていく中で、一つ決めたことがありました。それは「かっこいい」と言われるものを作ろう、と。
おもちゃやインテリアではずっと「かわいい」と言っていただいてきまして、それはもちろん嬉しいことなのですが、道具を作るということをやるんだったら、なんかそれは違うんじゃないかと。
例えば椅子を作ったとして、そこに目鼻をつけるというのは、やっぱり違う。もっとちゃんと(と言うのもおかしいんですが…)、「かわいい」より「かっこいい」と言われていかないといけないんじゃないかと。
これはもう、本当に僕にとっては大変なことだったんです。
独立前、インハウスデザイナー時代には紙工作パイプロイドを開発し、そしてその前にはゲームキャラのデザイナーをやっていた時代もありました。ずっとずっと、何かを作ったら、必ずそれをキャラ的に「かわいい」に持っていく、という世界で僕は生きてきました。
何を作ってもとりあえず目鼻をつけてキャラにしてしまうと言っても過言ではない、この「キャラ化衝動」を抑えてモノを作るというのは、何もない大海原に裸で泳ぎだすがごとくに怖いことだったんです!ほんとうに、つかまるものが何もない。
唯一の心の支えは、ポートランド。あの街に、短い期間とはいえ存在し、呼吸し、何か僕は一段高いところに登れたんじゃないか!?という淡い興奮からのこの泳ぎ出し。
キャラでないものを作るデザイナーさんなんてゴマンといますし、というか多分そちらのほうが多いでしょうし、何を言っているんだこいつは、こんな下らないことに1話割くな、とお叱りをうけそうなところでもあるんですが、本当に、これは自分にとって非常に大きな転換点だったんです。